novel U

□act.10 +α
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 午後の陽射しに照らされたそこは…切り取られた様に静かだった。

 聞こえるのは水をかくオールの音と、微風が流れて起る葉擦れの音のみ。

 時折鳥達の羽ばたきに脅かされるが…緩やかな時間には変わらなかった─。



「きれ〜っ…」

 瞳をきらきらさせて駆け出すのは俺の想い人。常に見せない天真欄満な姿は俺には新鮮で…なんとも愛くるしい。

 だからか元気に微笑うその顔を見ていると、連れてきた事が誇りに思えてきた。

「ここはな…お前の好きな場所のひとつだ」

 気に入ったか?と分かっていて聞いてみる。案の定振り返った顔には幸せそうな微笑み。

「うん…ぼくすきだよ」

 家の近くのよりおっきいや…と感嘆して見つめる姿は眩しかった。

 軟らかい鳶色の髪は風に煽られ…さわさわなびいている。
 蒼色に光る湖面は真っ青な空を写し出していたりと…、見渡す全てが沢山のアオだった。


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