novel T‐α
□冬の始まりの夜 <後編>
1ページ/11ページ
少しでもシリウスの側から離れようと、僕は必死で走った。
「───っ、おい!」
角を曲がるまでに、僕が言った言葉にシリウスが反応して…背中に声をかけられる。
何をどう思ったのか、さっきまでの撫然とした態度とは、明らかに違う響きを持たせた声と表情を浮かべて。
でも止まる訳にはいかなかった。
今シリウスに近付けば、確実に気持ちを打ち明けてしまう。
これ以上迷惑をかけたくないし、何より失恋すると解っていて告白するなどとても出来ない。
自分の足音以外の靴音に、シリウスが追い掛けて来るのを感じた。
「はぁ……はぁっ…はぁ…」
息が上がって苦しい。
溢れそうな悲しみが、苦しさに紛れて荒い呼吸に変わっていく。
段々と運動神経とは縁遠い僕の足は重くなる。
足りない酸素で必死で考えた。
シリウスが見付けられない場所はどこか。
僕らの忍の地図はどこに誰がいるか解っていしまう。
あれから隠れるには、どうすればいいのだろう?
小休止に立ち止まり、呼吸を整えていて…ふと窓の外の月明かりと共に、明るい星々が見えた。
「綺麗……」
一瞬自分の立場を忘れて見入る。
そして考え付いた。
「天文台なら……」
見付からない───。
_