novel T‐α

□冬の始まりの夜 <後編>
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少しでもシリウスの側から離れようと、僕は必死で走った。

「───っ、おい!」

角を曲がるまでに、僕が言った言葉にシリウスが反応して…背中に声をかけられる。

何をどう思ったのか、さっきまでの撫然とした態度とは、明らかに違う響きを持たせた声と表情を浮かべて。

でも止まる訳にはいかなかった。

今シリウスに近付けば、確実に気持ちを打ち明けてしまう。

これ以上迷惑をかけたくないし、何より失恋すると解っていて告白するなどとても出来ない。

自分の足音以外の靴音に、シリウスが追い掛けて来るのを感じた。

「はぁ……はぁっ…はぁ…」

息が上がって苦しい。

溢れそうな悲しみが、苦しさに紛れて荒い呼吸に変わっていく。

段々と運動神経とは縁遠い僕の足は重くなる。

足りない酸素で必死で考えた。
シリウスが見付けられない場所はどこか。

僕らの忍の地図はどこに誰がいるか解っていしまう。
あれから隠れるには、どうすればいいのだろう?

小休止に立ち止まり、呼吸を整えていて…ふと窓の外の月明かりと共に、明るい星々が見えた。

「綺麗……」

一瞬自分の立場を忘れて見入る。

そして考え付いた。

「天文台なら……」

見付からない───。






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