novel T‐α
□ある日の風景
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「買うか?」
「いい?」
「お前が欲しがりそうだ」
「そんなこと無いさ。…分かりやすいかなって、思っただけだよ」
くすっと鼻で笑われたのが悔しくて、心を読まれた気がして照れ隠しに、ツンと反抗してみる。
「こっちがシリウスで、こっちが私のだよ!」
最初に考えていた事を少し曲げて、逆に指差したら…シリウスは愉しげに笑った。
「そりゃいいや」
何がそんなにおかしいのか、笑いながら二つのカップを手に会計を済ませてしまう。
それを私に持たせ、今度はシリウスが先へ歩く。
「何処に行くんだい?」
「リーマスの馴染みの店」
「私の?」
「そこで待ってな。その日陰になった場所」
顎で指し示したら、自分は一人アイスクリームパーラーへ入って行く。
しばらくして、チョコチップのアイスを手に出てきた。
「ほらよ…リーマス。これで機嫌直せよ?」
「あっありがとう。シリウス」
山盛りのチョコチップに顔がにやけてくる。
ひとくち食べて、余りの美味しさに、さっき怒ったことなど忘れてしまった。
見つめてくるシリウスに微笑み返して、小さく言った。
「懐柔されてやりますか」
「そりゃどうも」
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