novel T‐α
□ある日の風景
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でもここで甘い顔をしたら負けるので、少し怒ってたしなめる。
「だ〜め。昨日の今日じゃ私の体力がもたないよ」
ピンと鼻の頭を指で弾いて離れると、止めていた火をつけ朝食作りを再開させる。
隣のオーブンから焦ばしいパンの焼ける香り。
ベーコンと玉子が焼けるパチパチした音。
背中には仕方なく席に着き、朝一番にフクロウが運んできた日刊予言社新聞を開くシリウス。
テーブルに並べられていく朝食を、摘み食いしようとした手を弾いて睨んでみたり…。
そんな当たり前の日常。
約束された幸せな日々。
これ以上ない、暖かな時間が今流れている。
「朝食の後、今日は何をしようか?」
パンにマーガリンを塗ってシリウスに差し出す。
受け取ってベーコンエッグをのせて食べるさまを見つめながら、私はサラダをつついた。
「そうだな、買い物に行くか?」
「そうだね。そろそろ食材の買い足ししなきゃ」
「他に足りないものチェックしたらスグに出よう。昼は外食な?」
「仕方ないなぁ…いいよ」
くいっとシリウスが飲み干したカップに、新しい紅茶を注ぐ。
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