novel T‐α

□ある日の風景
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「だから言ったのに…」

どこか楽しげな私を見て、シリウスは感付いたらしい。
ムッとむくれた顔で私を睨んでいる。

「わざとだろ?」

「まさか?たまたま、だよ」

不審げに横目で見られ、笑いを押さえきれなくなった私は、目を細めてシリウスに呼び掛ける。

「シリウス?」

不機嫌なシリウスの慰めかたは私が一番よく知っている。

「大丈夫かい?」

そう言って火を止めてからシリウスの手を取り、少し赤くなったそこに口唇を寄る。

「痛い」

そうたいして酷くないのに、我儘を云うシリウスに半呆れながら、それでも愛しくて…私は手から口唇を離してシリウスの口唇に近付けた。

チュッと触れるだけのキスは、スグに形を変えられ…深いものに変わる。

私が苦しがってシリウスの胸を叩くまで放さず、力が抜けてすがるさまを楽しんでいるようだ。

「で、ご機嫌は如何ですか?」

「朝食より、お前を食べたくなった」

優しく抱きとめて貰いながら見上げたシリウスに機嫌を窺うと、予想通りな回答が返って来…やっぱり笑いそうになった。


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