novel T‐α
□ある日の風景
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埋めたシリウスの頭を撫でて言い訳すると、少し眉をしかめた顔でシリウスが私を見た。
「体調が…悪いのか?」
「…違うよ。馬鹿だね…昨日君が、なかなか眠らせてくれなかったからだよ」
ペシッと額を平手で叩いて、シリウスから離れようと回された腕に指をかけた。けれどシリウスは離す気が無いらしく、更に力を込めて動きを封じられる。
「片づけなきゃいけないんだけど?」
息を混じらせてそう言えば、シリウスは杖を出してひと振りし、あっと云う間に元の位置に片してしまった。
勿論大鍋はテーブルの上に乗せて。
「ありがとう。でも離して貰わないと、朝食の支度が出来ないよ?」
「………」
無言の意思表示に、子供の様だと笑いがこみ上げてきて、構わず前進してみた。
案の定一緒にくっついてきて、私の動きに合わせて 身を踊らせる。
「別に良いけど…油が跳ねても知らないよ?」
子猿の様に離れないシリウスにちょっとしたアドバイスを投げ掛ける。と同時に鍋の油がパチンとはぜ、シリウスの手にかかった。
「Σうわっ……ちぃ〜」
流石に腕を離し油が着いた手を摩る。
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