novel T‐α
□ある日の風景
3ページ/8ページ
「だから言ったのに…」
どこか楽しげな私を見て、シリウスは感付いたらしい。
ムッとむくれた顔で私を睨んでいる。
「わざとだろ?」
「まさか?たまたま、だよ」
不審げに横目で見られ、笑いを押さえきれなくなった私は、目を細めてシリウスに呼び掛ける。
「シリウス?」
不機嫌なシリウスの慰めかたは私が一番よく知っている。
「大丈夫かい?」
そう言って火を止めてからシリウスの手を取り、少し赤くなったそこに口唇を寄る。
「痛い」
そうたいして酷くないのに、我儘を云うシリウスに半呆れながら、それでも愛しくて…私は手から口唇を離してシリウスの口唇に近付けた。
チュッと触れるだけのキスは、スグに形を変えられ…深いものに変わる。
私が苦しがってシリウスの胸を叩くまで放さず、力が抜けてすがるさまを楽しんでいるようだ。
「で、ご機嫌は如何ですか?」
「朝食より、お前を食べたくなった」
優しく抱きとめて貰いながら見上げたシリウスに機嫌を窺うと、予想通りな回答が返って来…やっぱり笑いそうになった。
_