屍界に咲いた黒い花

□合っても会えない
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「マーユーリん!」
「何だネ、その間抜けた呼び方は。やめたまえヨ」
「んふ、いいじゃないのヨ
 早速だけど、例のアレを頂戴したいんだけど」

祈騎の言葉に、涅マユリはやれやれと息を吐いた
実験器具と戯れていた指を止めて、マユリは振り返る

「もう使い切ったのかネ。少し頻度が過ぎるヨ。余り感心しないネ」

マユリの言葉に祈騎は頭を掻いた
誤魔化すように笑ってから、いやぁ、と話し出す

「最近疲れが取れなくてね。今日も特別休暇貰ったのよ、この旅禍で忙しい時になんて迷惑な」
「分かってるなら仕事をしたまえヨ」
「だぁからぁ、特別休暇を貰った以上、仕事出来ないんだってば
 それより、早く頂戴な。ほい、林檎あげるから」

祈騎は両腕で抱えていた紙袋からがさがさと林檎を一つ取り出し、マユリに向かってひょいと投げる
マユリはそれを受け取って、そのまま丸齧った

「なんだネ、毒の類が何も入っていないじゃないか」
「貴族の家の採れ立て林檎が毒入りだったら引くよ」
「んん? 朽木で林檎なんか栽培してたかネ」
「あたしが勝手に植え付けた」
「迷惑な嫁だネ」
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