屍界に咲いた黒い花

□銀の疾風
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「…初めてッスよ、俺
 副官章なんかつけるの」

廊下に足音を豪快に響かせ、左腕に副官章を絡ませながら六番隊副隊長、阿散井恋次が言った

「あたぼうよ、こんとに強制されてハメるんはワシも初めてなんじゃけえの!」

恋次の言葉にそう返したのは、七番隊副隊長、射場鉄左衛門
サングラスと、広島弁が特徴的な男だ

「副隊長は副官章をつけて二番側臣室に待機せよ──…か」

二番側臣室に着き、一足先に中に居たのは、

「…っと、」
「阿散井くん、射場さん」

五番隊副隊長、雛森桃
膝を折り床に座る、小柄な少女

「雛森。何だよ、まだお前だけか?」
「ううん、…如月さんが」
「如月さんって…祈騎さんトコのか? 何処に──…」
「此処だ」

声が聞こえて振り返ると、今先刻、恋次と鉄左衛門が通った扉のすぐ横の壁に、零番隊副隊長、如月時雨が背を預け腕を組んで立っていた

「…相変わらず気配消すの巧いッスね、如月サン」
「それはどうも」
「しっかし──召集かかって大分経つけど…まだこんだけしか居ねえのか」
「隊長、副隊長なんてのは尸魂界のあちこちに散らばってるからねェ」

長い緩やかな癖のついた髪を揺らして、扉に手を掛けそう言ったのは、十番隊副隊長、松本乱菊

「全員集まるのに半日ぐらい掛かるんじゃない?」

項から髪を掻き上げて、息を一つ吐く
着くずした着物から覗く豊満な胸が揺れた

「ウチの隊長さんもサッパリ連絡つかないのよ…困るわぁ
 所で時雨サンも呼ばれてるって事は…零番隊も動くワケ?」
「そのようだ
 …祈騎殿も総隊長に呼ばれていた」
「祈騎さんも?
 じゃ、乱菊さんのトコの隊長──あの天才児も呼ばれてんじゃねぇッスか?」
「そうかも知れんのぉ。何事も無けりゃいいが──…」

誰になくとも放った言葉は、一陣過ぎた微風が吸い込み攫っていった
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