06/08の日記

14:37

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「うわ、冷たっ!」

隣で少年が声を上げたのに、反射的にリヒターは顔を上げた。読んでいた本と赤い髪は風にぱらぱらと揺れ、赤が一瞬視界を遮った後、それを振り払ったリヒターは重い声を上げた。

「あまり近づくと凍傷を起こすぞ、氷よりも冷たいんだ」
「分かってるけど…僕の氷より冷たいなんて、不思議で」

答えた少年はジーニアスだ。その向かいには、セルシウス。リヒターは彼女と契約している上共に生活をしていたためさほど驚きはしなかったのだが(そもそも生活していた場所が場所だったので冷たさなんて感じやしなかった)、ジーニアスは手を離してもなおセルシウスをまじまじと見つめている。
見られている精霊はというと、珍しく困ったようにリヒターに視線を投げかけた。

「リヒター」
「何だ」
「あまり人に見られるのは慣れてないのだけど」

人に、という言い方がつっかかるのには突っ込まないでおこうか。
リヒターがぱたりと本を閉じると、音に牽制されたのかジーニアスははっと目をまたたかせた。

「あ、ごめん…そうだよね、女の子だもんね、見られるのとかは…」
「そういうわけじゃなくて、今まで見られると言えば熊か猪や鹿だったもの」

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