amorfrater

□其の陸.CDショップで剣道部員とマネージャー。
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「そういやさ、お前って何か欲しいもんあったりすんの?」

いつだったろうか。銀兄に、そんなことを聞かれた気がする。
別に誕生日も、これといった記念日も近くない。
だから、その時はただCDとか、と適当に返しただけだった。


「ん、これやる」
「……何コレ」
「何つったっけ、CDとか買えるカード」
「……何でくれんの」
「前言ってただろ?偶の兄貴からのご褒美だ、喜んで受け取れ」

それなのにどうして、この人はきっちり覚えててくれてるんだか。
若干押し付けられるように渡された小さなカードには5000の文字。好きなアルバム一枚だって買える。
実のことを言うと、あるのだ。聴きたいCDが。
だけど、だけど、何故かカードを使う気にはならなかった。
カードを押し付けるなり、兄さんは俺をCDショップへ誘導。自分は古本屋に行くだとかで、今度こそ別行動になった。

「………」

ぽつん。ひとりだ。ひとりぼっちだ。
それなのに、さっき別行動になると分かってしまった時に比べたら、あたたかい。

「……何なんだよ、馬鹿兄貴」

いきなりだった。お礼も言えなかったじゃないか。つーかいつ買う金貯めてたんだよ。まあ、5000円ちょっとだけだけど。
口に出した少しの悪態と、心中で吐く悪態との連続。
漏れた溜め息は、呆れに近かった。
それは、多分自分への。



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