Novel

□Shy boy! (2)
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「くそ……なんで今更降り始めんだ」

昼食後の眠い時間帯、苦手な授業を頑張って受けて、ようやく巡ってきた部活の時間。
せっかくの放課後の楽しみが、突然の雨によって潰されてしまったのだ。
こんな気分だと、いつも歩いている道を帰ることさえ面倒に感じてしまう。
嫌でも目に入る鈍色の空が、余計にそれを助長しているように思えた。

「海堂、今日はまっすぐ帰るの?」

後ろから突然話しかけられて、思わず肩を竦める。
振り返った先にいたのは、傘を持った河村先輩だった。

「そのつもりッスけど、先輩は……」

「あ、俺もだよ。えっと……い、一緒に帰ろうか?」

河村先輩と今までの関係じゃなくなったのは、一週間前、合宿という名のキャンプに行ったときだ。
実際、それまで別に意識していたわけでもないし、特に親しいわけでもなかった。
ただ、先輩はそんな俺のことをずっと見ていてくれた。
何故か、それがすごく嬉しくて。
この人の隣にいたい、って思った。

「突然雨降ってくるんだもん……困っちゃうよね」

俺が頷くと、先輩ははにかむような笑顔を浮かべて歩いてくる。
やっぱり先輩は優しくて、傘を持っていなかった俺を一緒に入れてくれた。
憂鬱な帰り道が、小さな楽しみに変わった。
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