ゆめ

□夜を喰らう獣
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夜、ふと目が覚めることがある。
それはなんの法則性も持たず突如訪れる。ごく普通の一日を過ごし、いつものように眠りにつく日も、宴の夜も、陸の上でも。
しかしその夜のいずれにも、一貫してなにか言い知れぬ寂しさが付きまとった。
言葉にできるほどに明確ではなく、しかし無視もできない、奇妙な痛み。

眠れない夜を、波の音だけを聞きながら明かした夜が何度あっただろう。
それは深い海の底にただひとりとでもいうような―――深い、孤独の夜だった。




私は部屋を出て、廊下を渡り、静かにその部屋の扉を開ける。
部屋の片隅の大きなベッドには、赤い髪の獣が私を待っていた。
近づくとぼんやりと目を開き、それは私をシーツの中に招き入れる。
太い腕が体に回り、ぐっと抱き込む。
がっしりとした体から、暖かな体温が伝わってきた。


「…寝ちまえ」


低い声でそう言うと、それは目を閉じた。
私も目を閉じる。
そのまま深く息をしてみる。
全身に、暖かなものが染み渡っていく。
孤独を知る獣は、ただ私の隣で眠っている。





*キッドの体にしがみつきたい願望。

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