buon viaggio

□I'll be with you
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「俺はお前の事を迷惑だとか思ってないし、いない方がいいとも思ってもないから」









寧ろ俺は




俺は―――








ああ、そうか


俺はやっぱりキーリの傍にいたいんだ


出来ることならこうして隣にいたいと思うんだ



不死人だろうが


キーリと違う存在であろうが


“俺”が“俺自身”がキーリといたいと


そう望んでいるんだ




すとんと胸に落ちた結論


何かと理由を付けて答えを後伸ばしにしていたけれど


でもきっと


ずっとずっと前から答えは出ていた


頭で考えなくても


心が


体が


分かっていた



だからこんなにも今


キーリをしっかりとこの腕で捕まえられた今


ぽっかりと答えを求めて空いていた空洞にその結論が

安堵という感情がぴったりとはまるのだ




「お前はいちいち変な事気にすんな、キーリ」

「だ、だって」


はあ、とまた小さく溜め息を吐く。

それはキーリに対してじゃなくて自分に対して。

そんな俺にキーリはむっと小さく頬を膨らませて居心地悪そうに反論してこようとした。

けれど俺の次の言葉と行動で、キーリはその勢いを失う事になる。


「嫌じゃないから、俺がキーリにいて欲しいと思ってんだからさ」

「っ」


落下した時に付いたのであろう瓦礫のせいで汚れたキーリの頬。

答えながら、それを何も考えずに指先でそっと拭った。

思いの外柔らかいその感触が気持ちよくて、汚れなどもう無いのにもう一度頬を撫でてやれば、キーリはぴくりと肩を跳ねさせて頬を赤く染める。

そして急に大人しくなって視線を彷徨わせ始めた。


……

……て、無自覚だったとはいえ何をやってんだ俺は!

兵長がいたら間違いなく破廉恥だ!!と怒鳴ってるだろう


そんな事を考え、ふと自分の行動を思い出して内心で一人焦る。

慌てて指をキーリの頬から離せばキーリがじっと俺を見詰めてきた。


さっきまで恥ずかしげにしてたってのに何でそんな名残惜しそうな顔してんだよお前は

こっちが恥ずかしくなるっての


「……それにしてもお前、俺の寿命縮ませる気?」

「え?」

「たく、だから目が離せないんだ」

「……」

「俺に怪我させたくないと思うなら、厄介事に巻き込みたくないなら俺から離れんな」


最初はさっきまでの空気が恥ずかしくて話題を変えるつもりで言ったけれど、いつの間にか真剣さを帯びていた自分の声。

キーリも真っ直ぐに俺を見上げてくる。


「俺の傍にいろ、キーリ」


後から思えばこの言葉が一番恥ずかしいものだったんじゃないだろうか。

なのにそれを迷わず躊躇いなく言えたのは吹っ切れたからなのか、それとも頭部を打ち付けた衝撃で思考回路が可笑しくなったからなのか。

けれど、どちらにせよその言葉は本心には違いなくて


「いいな?」

「え、えっと……」

「返事は?」


思いも寄らない俺の言葉にキーリは白いその頬を一層赤く染めて挙動不審なまでに視線を泳がせていた。

それが可笑しくて笑いそうになるけれど、緩みそうになる頬を叱咤して有無を言わさぬ様な少し強めの声で返答を促す。

そうすれば


「……。……はい」

「―――よし」


こくんと小さく頷いたキーリ。

それに満足感を覚えている自分。

今の俺をもしユドが見たらなんて言うんだろうか。














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