buon viaggio

□I was just frightened
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「っ……はぁっ、はぁっ、はぁっ」






咽の悲鳴と共に響く自分の荒い息づかい。

路地裏に反響する靴音。

見た目からは想像できない程の力で握られた腕が痛い。


「ア、アンナっ。どうして急にっ!」

「ふふ、言ったでしょう?キーリ。あたしに良い案があるって」

「でもっ」

「だから心配しないで?」


キーリの非難めいた言葉でさえアンナは笑顔で遮った。

その浮かべられた笑みが何故か怖くてキーリは救いを求める様に後ろを振り返る。

そうすれば狭い路地裏に苦戦しつつも必死に追いかけてきてくれているハーヴェイの姿が目に入り、安堵にも似た感情がこみ上げてくると同時にちくりと主張する胸の痛み。


「っ」


一体私は何をやってるんだろう

ハーヴェイを困らせたくないと思っているのに

これ以上傷ついて欲しくなんてないのに


なのに


なのに今だってこうしてハーヴェイを巻き込んでいるのは


傷付けようとしているのは


他の誰でもない私で




「アンナ!!」



このままじゃ駄目だとキーリはいくらか乱暴に腕を振り解こうと試みた。

けれどそれは何の意味もなさず無理矢理に走らされる足が止まることもない。



一体どこに連れて行かれてしまうのだろう

アンナは良い案だと言ったけれど正直そうだとは微塵も思えなかった

それは直感にも似て脳の端からチリチリと危険信号が発せられている気すらした

そしてその嫌な予感はもう間もなく的中することになる








「ほら、キーリ」








ふいにアンナが柔らかな声を発した。

ふわりと柔らかな笑みを浮かべた。

急に視界が開け眩しさに目を細めた先には見事な景色。

そしてアンナは相変わらずふわふわと宙を走っていきキーリはされるがままに手を引かれ走っていく。



頬を撫でる風は気持ちよくて


スモッグの掛かった空がずっと近く見えて




けれど














スッ―――













「―――え?」











急に痛いくらいの力から解放された


足が空を蹴った




















砂色の





ソラ





そら





空―――


















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