三國無双

□玄
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春は、すぐ近く迄やって来ていた。




室は整然として居て、外には兵卒の姿も無い。
此れからは子敬殿の執務室に為るのだろう。



愛用の筆。

持ち込んでいた筝。

綺麗な佩玉。

焚き染めていた香。

窓枠の血痕。


彼の人の室であったことを想うには、足りないものが多過ぎる。


何も無かった。


耳奥の雑音も、此の部屋のものでは無いのだ。
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