三國無双
□晩秋
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朝目覚めた時から、右のこめかみが痛かった。
何か、酷く嫌な夢を見たような気がしてならない。
覚醒前は記憶に有ったのだが、瞼の赤みを覚えていくうち有耶無耶に成ってしまった。
天幕の外では、今日は格別寒いとぼやく兵達の声。
嗚呼、成程。
手や、鼻の頭はすっかり冷たく成って居た。
又、夢見の所為か呼吸が乱れて居る。
胸が苦しいのは、着込んだ儘の鎧の為だけではないだろう。
此れは予兆である。
詰めて居た何かが、弾みで切れたのか。
晩秋に差し掛かる辺りに、こうして訪れる様になったのは、何時頃からであったか。
彼は覚えて居なかった。
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