三國無双

□揺乱
1ページ/1ページ



「今は少しだけ放って、おいてくれ」


肩が震えて、往ったり来たりして居る。
目の前に居るのに遠い人が更に突き放すので、私は何時迄も敬語です。分かり切っている、というのは如何したって傲慢だ。


立ち竦む端で鳥が流れる。
うようよと漂う色味は似ている。



「(あ)」


その浮遊物が朱の欄干に引っ掛かる。

胸を膨らませて誇る仕草が何時か何処かの女を彷彿とさせたが、それらには顔が無かった。


「仰せの通りに、」


何も驚くことはない、
最早彼方に物言わぬ人が居るからである。
俯く彼は、悲嘆に暮れているのか、憤怒の中にいるのか、

否、
笑っているのかも知れぬ。
肩が震えて、往ったり来たりして居る。


陸遜は溜息を押し殺した。


いずれ欄干のものは飛び立つが、
彼の人は例え午だとしても、細い月に引っ掛ける心算なのだ。







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ