小説U
□『相反する思い〜mail〜』
1ページ/2ページ
『誕生日おめでとう』
たった一言
簡素な言葉。
【相反する思い〜mail〜】
メールの着信音に、ポケットの中に入れていた携帯を取り出す。
何気無く見たディスプレイには、アンタの名前。
「──────…っ!?」
一瞬自分の目を疑い、慌ててメール画面を開く。
そこには、たった一言。
「………………」
アンタらしいと言えばアンタらしいけど…
近況報告とか、他に何かないのかよ…
メールが有っただけでも、アンタにしたら良い方なんだけれども…
何日…何ヶ月会ってないと思ってんだよ。
忙しいのは分かっているけど──…
せめて、電話くらいしてこいよ…
そう思うけれど、こっちから掛けるのは何か癪で…
手の中、此方を淡く照らすディスプレイを、何も言えず、ただ、睨み付ける様に見詰めていた…。
思い出すのは、青い髪と、赤い軍服を靡かせるアンタで…
思い出すのは、過去の残像ばかり…
今のアンタの姿を思い浮かべる事なんて、今のアンタを知らない自分には出来なくて…
折角の誕生日だというのに、頭の中を占めるのはアンタばかりで…
結局、嬉しい筈のそのメールによって、その日一日モヤモヤとした気持ちに包まれることとなった…
アンタに会えない誕生日なんて…
嬉しくもなんともない…
アンタは今
ドコに居るんだよ──…
end…