小説U
□『逢瀬〜夢現〜』
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ピピ…という微かなアラーム、電子音で目覚める。
「…ん……っ…」
ボウッと霞む重い頭を上げ、その音に体を起こす。
何時の間にか、眠りに落ちてしまっていたらしい…。
机の上に体を凭れ掛らせた無理な体勢は、体の節々を鈍く痛ませる。
それに顔を顰め、音のした方を振り返れば…
「……来ちゃった…。」
‥─【逢瀬〜夢現〜】─‥
部屋の扉を背に、そんな事を言い佇むその姿…
鳶色の髪の、見慣れた筈の幼馴染みの微笑み。
「……き…来ちゃった…って…」
確かに部屋のロックは掛けた筈だが…
いや、そんな事より…
「…何…で……」
何で、居る…
居る筈のないその姿…
だってキラは──…
「会いたかったから…」
夢の続きの様な目の前のお前から発せられるのは、そんな言葉。
「無理してるんじゃないかと思って…」
そしたら案の定だし…と、キラは苦笑を浮かべる。
その姿を、只、幻でも見る様に茫然と見詰める事しか出来ぬ自分。
そのまま言葉も無く、立ち上がる事さえ出来ずにいる自分に、キラはその顔に笑みを乗せ…
「お疲れ様…」
そう言い、ゆっくりと此方に歩み寄り、そんなキラを見上げる事しか出来ない自分へと口付ける。
「…ん………」
柔らかな温もりに、先程迄閉じていた瞼が、又、とろりと下がる。
何も抵抗の出来ぬ自分を、寝起きの頭の所為にし、何故…とか、何で…と思う思考を頭の片隅に追遣る。
夢でも良いと思った…。
今はただ、久し振りに触れるキラの体温を感じていたかった…。