小説T

□『pillage〜独占欲〜』
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「ん───…」


隣に居る筈のシンを求めて手を伸ばす。


けれど、その手に触れたのは…



「おはよう…。アスラン。」




【pillage〜独占欲〜】




「…キ…ラ…?…」

笑みを浮かべたキラが…


「そうだよ?それがどうかした…。」


居る筈がないのに…。


此処は…


シンの部屋の筈なのに…


「なん…で…」


そんなアスランの呟きに、キラは、


「何でって、何が…」


何時ものあの笑みを浮かべてのそれ。


「ああ…。もしかして、何で僕がシン君の部屋に居るかって訊いてる?」


「─────…っ!」


何時ものあの笑みで…


ヒクリと体を竦ませ、本能的に逃れようとするが…


「どうしたの…そんな顔して…。」


ギシッとベッドを軋ませ、キラが上へ伸掛ってくる。

シーツの上に乗られ、その重みで身動きが取れなくなる。


「ねえ、アスランはさ…どうしてこんなトコに居るのかな…。」


先程の問いを、今度は自分に返される。

「─────…っ」

昨夜は…

シンと…

そこまで考え、ギクリと体を硬くする。

そういえば…
 
 
「───っシ…ン!」


漸く気付く。

此処はシンの部屋で、昨夜から今朝まで確かにシンが此処に居た筈だ。

そのシンの姿が…


「シン君?」


キラがその名を呼ぶ。

そして…


「シン君なら、其処に居るでしょう…。」


そう言い、示された先に…


「シン!!」


ベッドの先。丁度足元の方、壁に凭れ掛る様にシンが床に座っていた。

その目は閉じられていて、両腕は背に回されて縛られている。

「シンッ!」

名を呼んでも、ピクリとも反応しない。

「キラ…!シンに何をした!」

自分の上、悠然と見下ろしているキラを睨み付ける。

返答次第じゃ、ただじゃおかない。

途端、鋭くなったアスランの瞳を眺め、キラは然して気にした風もなく、にっこりと笑った。

「眠ってるだけだよ。ちょっと薬を嗅いで貰って…。」

そう言い、ベッドの上に転がる硝子の小瓶と真っ白い布を指す。

「暴れられても困るからね。ちょっと大人しくしてて貰おうと思って。まあ、もうそろそろ起きると思うけど…。」

そんなキラの言葉を聞き、アスランはシンの下へ行こうともがく。

だが…
キラの力は思った以上に強くて…
 
 
「キラ…ッ…どうしてこんなこと…っ!」


自分の上、普段と変わらぬ表情を浮かべるキラを睨み付ける。


「どうして…?」


君がそれを言う?…


「君が誰のものか、分からせてあげようと思って…。」


にっこりと笑って告げられたそれに、ゾワリと体が総毛立つ。

「い…いや…だ…っ…!」

良くないキラの笑みに、嫌な予感が頭を過ぎる。

キラの元から逃げたいのに、易々と両腕を捕られる。

そして…


「シン君の前で抱いてあげる…。」


吐息が触れる程の近さで告げられた言葉に、頭の中が真っ白になる。


シンの前で…?

キラに…?


「──────…ッ!?」


目を見張ったアスランを楽しそうに眺め、その唇に触れるだけのキスを落とす。


「だって…、君は僕のものでしょ?アスラン…。」


と、とてもキレイに微笑む。

「ち…ちが…っ…」

何時もと異なるその笑みに、恐怖を覚える。

キレイで、キレイで…

アスランの体を竦ませる。
 
 
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