小説T
□『pillage〜独占欲〜』
1ページ/7ページ
「ん───…」
隣に居る筈のシンを求めて手を伸ばす。
けれど、その手に触れたのは…
「おはよう…。アスラン。」
【pillage〜独占欲〜】
「…キ…ラ…?…」
笑みを浮かべたキラが…
「そうだよ?それがどうかした…。」
居る筈がないのに…。
此処は…
シンの部屋の筈なのに…
「なん…で…」
そんなアスランの呟きに、キラは、
「何でって、何が…」
何時ものあの笑みを浮かべてのそれ。
「ああ…。もしかして、何で僕がシン君の部屋に居るかって訊いてる?」
「─────…っ!」
何時ものあの笑みで…
ヒクリと体を竦ませ、本能的に逃れようとするが…
「どうしたの…そんな顔して…。」
ギシッとベッドを軋ませ、キラが上へ伸掛ってくる。
シーツの上に乗られ、その重みで身動きが取れなくなる。
「ねえ、アスランはさ…どうしてこんなトコに居るのかな…。」
先程の問いを、今度は自分に返される。
「─────…っ」
昨夜は…
シンと…
そこまで考え、ギクリと体を硬くする。
そういえば…
「───っシ…ン!」
漸く気付く。
此処はシンの部屋で、昨夜から今朝まで確かにシンが此処に居た筈だ。
そのシンの姿が…
「シン君?」
キラがその名を呼ぶ。
そして…
「シン君なら、其処に居るでしょう…。」
そう言い、示された先に…
「シン!!」
ベッドの先。丁度足元の方、壁に凭れ掛る様にシンが床に座っていた。
その目は閉じられていて、両腕は背に回されて縛られている。
「シンッ!」
名を呼んでも、ピクリとも反応しない。
「キラ…!シンに何をした!」
自分の上、悠然と見下ろしているキラを睨み付ける。
返答次第じゃ、ただじゃおかない。
途端、鋭くなったアスランの瞳を眺め、キラは然して気にした風もなく、にっこりと笑った。
「眠ってるだけだよ。ちょっと薬を嗅いで貰って…。」
そう言い、ベッドの上に転がる硝子の小瓶と真っ白い布を指す。
「暴れられても困るからね。ちょっと大人しくしてて貰おうと思って。まあ、もうそろそろ起きると思うけど…。」
そんなキラの言葉を聞き、アスランはシンの下へ行こうともがく。
だが…
キラの力は思った以上に強くて…
「キラ…ッ…どうしてこんなこと…っ!」
自分の上、普段と変わらぬ表情を浮かべるキラを睨み付ける。
「どうして…?」
君がそれを言う?…
「君が誰のものか、分からせてあげようと思って…。」
にっこりと笑って告げられたそれに、ゾワリと体が総毛立つ。
「い…いや…だ…っ…!」
良くないキラの笑みに、嫌な予感が頭を過ぎる。
キラの元から逃げたいのに、易々と両腕を捕られる。
そして…
「シン君の前で抱いてあげる…。」
吐息が触れる程の近さで告げられた言葉に、頭の中が真っ白になる。
シンの前で…?
キラに…?
「──────…ッ!?」
目を見張ったアスランを楽しそうに眺め、その唇に触れるだけのキスを落とす。
「だって…、君は僕のものでしょ?アスラン…。」
と、とてもキレイに微笑む。
「ち…ちが…っ…」
何時もと異なるその笑みに、恐怖を覚える。
キレイで、キレイで…
アスランの体を竦ませる。