小説T
□『贈り物』
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誕生日には薔薇の花束を…
・.*:..:*【贈り物】*:..:*.・
「ラクス嬢…?」
名を呼ばれ、振り返る。
「あ…イザーク様。」
振り返れば、白い軍服に身を包んだその姿。
「お疲れならば、休まれますか?」
事務的な口調で問われるそれに、
「そういう訳ではないのです。」
と、ふわりと笑みを浮かべる。
「でしたら…。」
先を促すイザークのそれに…
「…今日は、私の誕生日ですの。」
「はあ…」
然程興味無げなイザークの返事。
「昔は、私の誕生日の度に、アスランが薔薇の花束をプレゼント為て下さいましたの。」
「…あのアスランが…?」
あの甲斐性の無い男が…。
と、眉を顰めるイザーク。
「はい。毎年毎年、同じ薔薇の花束を。」
思い出し、くすりと笑みを浮かべる。
赤くなった顔で、ぎこちなく差し出された花束。
それがとても嬉しくて…。
「…今、どうしておられるのでしょうか…。」
今、此処には居ない。
皆、各々の道を行く。
未来を見据えて…
「…アイツは…。アイツの信じる道を行きます。」
ポツリと漏らされたその言葉に…
「ええ。そうですわね。」
と、笑みを浮かべる。
「…行きましょうか。」
止めていた歩を進める。
アスランは、アスランの信じた道を行く。
皆、自分の信じた道を行く…。
いつの日か、平和な日々を夢見て……
*:..:*end*:..:*