小説T

□『その手に手を…』
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貴方は、私が居なくなったら泣いてくれる…?



【その手に手を…】



アスランはカッコイイの。


沢山見せて貰ったラクス様の『ラクス・クライン』の資料。
沢山ある華々しい情報。

でも、その中で一番私の目を引いたのが『アスラン・ザラ』だった…。

美目秀麗。
あのアカデミーを首席で卒業、ザフト軍のエースパイロットだったその姿。
あのラクス・クラインと並んでも、退けをとらないその姿。

二人並んだら、まるでお伽話の中のお姫様と王子様…。

だから、私もそのアスランの隣に並んだら、お姫様になれるの。


だって、私は今『ラクス・クライン』だもの。


カッコイイアスランは、優しくって、きっと私を誉めてくれる。
だって、私はラクス様のお役にたっているもの。
沢山沢山お仕事して、精一杯頑張っているもの。

だから、アスランはきっと私を誉めてくれる。


ラクス様の代わり、ありがとうって──…



初めて会ったアスランは、やっぱりかっこよくて、議長も期待しているって。

やっぱりアスランはスゴイのよ!

ラクス様の、私の王子様だもの。
だから、きっと私のことも好きになってくれる。

だって、私はラクス・クラインだもの。

だから…


そう、思ってたのに…




アスランは、議長を裏切った。




雨が降ってたの…

一緒に行こうと…
逃げようと…

でも、あの時、私はアスランの手を取ることが出来なかった…

アスランは、手を差し出してくれたのに…

ラクス・クラインなミーアは、その手をとれなかった…


あの時、その手をとっていたら、何か変わっていた…?


沢山、泣いて泣いて…
それでも分からなくて…



その後…


アスランは、ラクス様の所に…



何で…と思う心と
やっぱり…と思う心…



私は、ラクス・クラインにはなれないの…?


ミーアは、ミーアのままなの?──…





アスランは…

ミーアのままの私を見てくれる?…



ミーアのままの私の死を、悲しんでくれる…?



何も聞けなかったけど、貴方は私に、涙を見せてくれたから…。


私の名前を呼んでくれたから…


『ラクス』じゃない

『ミーア』って…


だから、ミーアのままでも、良かったかなって思えたの…


本当に、最期の最後だったけど…
そう思えたのは…


貴方のおかげ…。


だから…



やっぱり…大好き。



伝えられなかったけど、遠く、暗くなる意識の中でそう思った…




アスラン───…




もう、手を伸ばしても届かないその人の名を最期に…




end…

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