小説T
□『薬〜phantom〜』
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「ん────…」
何故、自分は呼ばれている…。
自分の名を呼ぶ声に、意識を覚醒させる。
始めに目に付いたのは…
翠緑の瞳。
そして…
藍色の髪…。
「──────っ!?」
まるで、鏡を見ている様な錯覚を起こす。
自分と同じ顔が、今、目の前に…
「起きたか?…」
口元に笑みを浮かべ、目の前の人物はそう言う。
声までが…
そっくりで…
両目を見開いたまま固まったアスランに、その体に多い被さる様に上になっていた男は、ゆっくりとアスランの頬を撫で上げ…
「どうしたんだ…?そんなに驚いた顔をして…。」
と、くすり…と悪戯な笑みを浮かべる。
「なん…で…」
呆然と呟くアスランに男は、
「何で?さあ…何故だと思う…。」
至極楽しそうに、アスランのその言葉を紡ぐ唇を指の腹でなぞる。
何も言えず固まっているアスランに、男は…
「そんな事は、どうでもいいだろう…。」
それよりも…
「楽しもう…『アスラン』…。」
ふわりと微笑み、アスランのもの言わぬ唇へと口付ける。
「──────っ!?」
自分の唇へと触れる男に、両目を見開く。
柔らかな…
感触が…