黒バス
□夢色ソーダ
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「……よくそんな恥ずかしいこと言えますね」
誰が聞いても恥ずかしくなるようなことを、このイケメンは堂々と言う。しかも言ったことが恥ずかしいと自覚していないから天然は恐ろしい。
黒子は頭を押さえて溜め息をついた。
「思ったことそのまま言っただけっスよ」
「それが恥ずかしいんですよ」
「あ、そーだ黒子っち」
「なんです…」
顔をあげるとすぐ近くに黄瀬の顔があった。急な出来事で体が動けずにいたら黄瀬は黒子の持っていたアイスにかじりつく。
そして黄瀬はわざとらしく自分の唇をぺろりとなめて甘ったるい声で黒子の耳元で囁いた。
「黒子っち食べちゃった」
急に体が熱くなり、アイスを食べて体内に行きわたった冷気が一気に吹き飛んだ。
ドスッ!
考えるより先に体が動いた。
「黒子っち……ひどい」
はっと我に帰ったら黄瀬が隣でおなかを押さえていた。体が反射的に動いたと思ったらどうやら黄瀬のおなかを殴っていたらしい。謝ろうかと思ったがどう考えても黄瀬が悪いので、黒子はふいっと頭を振った。
「黄瀬君がバカだからです」
「え〜、そうっスか?」
大したダメージはなかったらしく、黄瀬は顔を緩めて笑っていた。殴られたというのになにも言わないし、ちらっと振り返ったら何より嬉しそうな顔をしているのが見えてどこか腹立たしい。
明らかに調子に乗っている。なんだかんだ言って黒子が黄瀬をつき離せないと分かっているから、黒子が本気で嫌がること以外は割と行動に出る。そしてそのたびに黒子の反応を見て楽しんでいるのだ。
けれどもやられっぱなしは性に合わない。それに許していると彼はいくらでも踏み込んでくる。
「黄瀬君」
「なんすか?黒子っち」
ガリ!
名前を呼ぶと、黒子は黄瀬の手首を掴んでアイスを引き寄せる。そして口を開けて勢いよくかじりつく。口の中にソーダとは違った、ほんのりレモンの味が広がる。
「お返しです」
そう言って顔をあげると、視界に映った黄瀬は顔を夕日のように真っ赤にして口をパクパクさせていた。その反応が予想外でなんだか自分も恥ずかしくなり、黒子は慌てて背中を向けた。
なんだろう、恥ずかしいけれど仕返しが出来て少し嬉しい。黒子の頬がいつもより少しだけ緩んでいる。
「ほら、さっさと帰りますよ」
「あっ、待ってよ黒子っち〜!!」
***
((((アイツらあれで付き合ってないんだよな……))))
その光景を見ていたキセキの世代は持っていたアイスをかじった。