黒バス
□日常ライン
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黄瀬がスタメンになってから一週間、通常練習の合間を縫って黒子とパス練習をするようになった。スタメンになったら試合に出る頻度は当然増えるし、その分連携をとることが大事になる。そのため赤司から特別メニューを追加されたのだ。
「あっ!!」
黒子がボールをタップパスしたら、そのボールを取り損ねた黄瀬が声を上げる。転がって行ったボールを目で追いかけて指さすと黒子に向き直った。
「黒子っち、今の速くないっスか!?」
「そうですか?」
「そうっスよ!」
「それくらい青峰君なら余裕ですよ」
青峰の名前を出すと、黄瀬はあからさまにムッとした。そしてその表情のまま、体育館の端まで転がっていったボールを拾いに行く。
その後ろ姿を見て黒子は溜め息をついて汗を拭う。
青峰に憧れてバスケを始めたからか、黄瀬は青峰を引き合いに出すと不満そうでどこか悔しそうな表情をする。追いつきたいと思ってはいても、いまだに一対一で勝つことは出来なくて、せめてどこか一つでも青峰に勝ちたくて躍起になっているようだ。
「お前黄瀬に厳しすぎねえか?」
青峰がそばにやって来ると、頭の上に重みが加わり視界の端に浅黒い右手が見える。ちょうどいい位置にあるからと、青峰はよく黒子の頭に腕を乗せてくる。重いからやめてほしいと黒子はいつも言っているのに、止める気配は全くなくて最近は注意するのも止めた。
「そうですか?気のせいですよ」
「いやだって今のコースとスピードはオレでも厳しいぞ」
そんなわけない。どんなコースでもどんなスピードでも青峰ならきっと易々と取ってしまう。以前黒子がムキになって練習中に際どいパスを出したのにそれでも取ってしまった。
その時のことを思い出して黒子は溜め息をついた。するとわずかに動いた腕が気になったのか、青峰が顔をのぞかせた。
「どうしたテツ」
「何でもありません」
顔を背けたかったけれど重みのせいで動かすことが出来ず視線だけ下に逸らす。すると体育館の床に額から垂れた汗が落ち、その水滴を黒子はじっと見つめていた。
「黒子っち、今のもっかいっス!!」
声が聞こえたので視線を上げると、黄瀬がボール片手に戻ってきていた。
「わかりました。……というわけで青峰君どいてください」
「へいへい。つかどうせならオレもまぜろ。ディフェンスいた方が燃えるだろ?」
「じゃあお願いします」
「マジっスか!青峰っちには負けねえっスよ!!」