黒バス
□夢色ソーダ
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「暑ーい」
部活帰りに寄ったコンビニの前で黄瀬はうだるような暑さに唸った。夕方とはいえまだまだ暑い。手で風を送ってもうちわのような効力はなく大して涼しくない。
コンビニの中は天国のように涼しかったが一歩外に出れば地獄のようだった。身体に纏った冷気の鎧は日差しの槍にたちまち奪われてしまう。
「唸るの止めてくれませんか。余計暑くなるんで」
「え〜?だって暑いじゃないっスか。黒子っちは暑くないんスか?」
「暑いに決まってるじゃないですか。だからこうしてアイス買ってきたんですよ」
黄瀬の隣に立っている黒子は今買ってきたばかりのゴリゴリ君の袋を開けて一口かじる。それを見て黄瀬も持っていたゴリゴリ君を同じようにかじった。
「ねー、黒子っち」
「なんですか」
「レモンスカッシュってなんかオレっぽくないっスか?」
黄瀬はそう言って自分の持っていたゴリゴリ君を顔の横に並べる。レモンスカッシュ味のアイスが日差しを受けてキラキラ輝く。
黒子は黄瀬の言葉を聞いて何を言ってるんだろうかこの人は、と言いたそうにしていた。どこか不思議そうな表情をしていて、どこか呆れたような表情を。
「まあ黄色ですし」
無難に答えると黒子はアイスにかじりつく。早くしないと熱気で溶けてしまう。口に含むたびにシャリッっと涼しげな音がして、冷気を一緒に運んでくれる。黄瀬はそれを眺めながら左手で黒子の持っているソーダ味を指した。
「そんで、黒子っちはソーダ」
「……あげませんよ」
「そうじゃなくて!」
アイスを狙われていると思った黒子はアイスを黄瀬から離す。もう半分程しか残っていないが熱気が苦手な黒子にとっては大事な生命線だ。
黄瀬はソーダ味のアイスを見つめる。それはきれいな水色をしていて黒子の髪のようだ。
「黒子っちってソーダみたいだなーって」
透明で透き通っていて、クリアで鮮明で。
でも口に含むとシュワシュワしていてどこか刺激的で。
「影薄くて透明みたいですからね」
「そうじゃなくて!」
言いたいことがあるのに伝わらなくてもどかしい。
まあ自分の言い方が抽象的だからというのは分かっているから、黄瀬は必死で頭を回転させる。普段頭を使うのが苦手だし熱気とあいまじってくらくらしてきた。
「ソーダって色んな種類があるんスよ。例えばー」
黄瀬は辺りを見渡してバスケ部員の中から目的の人物達を探す。割と背が高めな部員の中でも彼らは一際大きいからすぐに見つかった。ちょうど四人一緒にいて何か話しているようだった。
黄瀬はまず緑間を指差す。次に青峰、紫原、赤司と順番に。
「メロンソーダ、ブルーソーダ、ぶどうソーダ、ストロベリーソーダ」
「レモンソーダ」
そして、最後は自分。
「透明だからこそ色んな色と混ざってすごい化学反応が起こるんスよ、オレ達みたいに」
黒子という影があるからこそ、キセキの世代はより光として輝ける。
混ざり合った色んな色のソーダみたいにキラキラと。
化学反応みたいにお互いの力を引き出しあって。
より一際輝けるのだ。