童話

□赤ずきんちゃん
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[さて、家を出た赤ずきんは森を抜けたところにあるおばあさんの家を目指して全速力で走っていました。]
(ナレーション)


ざっと距離を言うと、赤ずきんとおばあさんの家は3kmも離れています。
その距離を一切緩めることなく走っている赤ずきんは、家を出てから3分で1km地点に到着していました。



赤ずきんの家に向かう途中だった狼さんはどどどどっ地鳴りを聞き、立ち止まっていました。
その原因は自分の目の前を通り過ぎていきました。

「・・・」


[狼さん?赤ずきんが通り過ぎましたよ?]


それを赤ずきんだと判断するのに少し時間がかかった狼さんでしたが、すぐにハッとし大きな声で赤ずきんを止めに入ります。


「おーい!赤ずきんー!!!」


すると狼から50m当たりにいた赤ずきんは急ブレーキをし、声がした方向に身体を反転させた。


「やや、狼さんじゃないですか。どうしたの?」


赤ずきんは狼をみても動揺せず、平然とした顔で狼さんのもとに小走りで戻ってきました。



[狼さんをみて驚かない赤ずきんでしたが、それはすでに当たり前のことでした。
これが初対面ではないからです。

狼さんは過去に100回ほど赤ずきんを襲っていますが、ことごとく失敗していたのです。

襲われていたことを知らない赤ずきんは、狼さんとは友達気分でいました。

それがなんとも複雑な気分な狼さんでしたが、まあ仕方ない、と半ば諦めていました。]


「別に諦めてないし100回じゃねぇぇぇぇ99回、だっっっ!!」


「狼さん?誰に向かって話してるの?」


空に向かって怒鳴る狼さんを赤ずきん不思議そうな顔で眺めてます。

身長差があるため必然と見上げる感じになってしまい、少し上目遣いで見上げる赤ずきんはなんとも可愛いものでした。


「///」

[狼さん、しゃれにならねえっす]

「うっせえええ!黙ってろっ///」

赤ずきんをみた狼さんは顔が真っ赤でナレーションは突っ込まずにはいれれない。


「おーい、狼さん?」


「あ、ああ」

また空に向かって叫ぶ狼さんを赤ずきんは心配しながら手を狼さんに向かってぶんぶんと振っていた。


「お、おまえそんなに急いでどこ行くんだ?」


「おばあさんちにお届け物をしに行くんだよ」

赤ずきんは、にぱっと笑いながらどこにいくかをいった後、急いでいた理由も話し出した。

「お母さんが焼いたパイとぶどう酒を届けるんだけど、パイって焼きたてのほうがおいしいでしょ?だから冷めないうちに、って思って急いでるの。」


「へえー」


「じゃ、そういうことだから」


また走りだそうとする赤ずきんの手を爪で傷つけないように掴み、狼さんは赤ずきんを止めた。


(ここは、時間を稼いで罠を張らなければ・・・)


「む、向こうにさ、花畑があるんだけどそれを摘んで行ったらどうだ?ばあさんも喜ぶと思うぞ?」


「えーでも、パイが冷めちゃうし・・・」


「大丈夫だって!冷めてもまた温めれば美味しいし、熱いままだとパイ生地が硬いからのどにつっかえるしな」

「へえそうなんだ。じゃあ急がなくてもいっか」

「そうそう」

「花畑ってどこー?」

「こっちだよ」



どうやって先導して花畑にむかう狼の顔にはしてやったりとした笑みが浮かんでいた。
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