文庫

□大切なもの 10'10'20
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「どうした。…てめえの考え事ぐらい大体分かるがな。」

「何でもお見通しってか?嬉しいねぇ、義兄弟(きょうだい)。」

「言ってろ。それより早く離れろ、傷口開いちまったらお前のせいだぜ。」

「また俺が治してやるから安心しろ。」






リクオから離れた鴆は塗り薬が入った小さな容器をリクオに差し出す。
其れを受け取ると部屋を後にするように障子を開ける。もう夜が明けそうで、向こうの方から陽が昇り始めていた。薄明るい中帰ろうとしたが、その前に一度振り返り言いたいことがあったがリクオを見ている鴆と互いの眼が合う。



また次の時でとリクオは言葉を飲み込むと再び背を向け、代わりに左手を軽く挙げてその場を後にした。
そんな姿に鴆も何も言わず見送るだけにした。本当は言いたい事があった筈だが、あんな姿を見ていると何も掛けず守ってやりたいとそう思うようになる。







リクオは奴良組本家に帰って来た頃には朝日が昇っており夜の姿はなくなっていた。今回の一件を総大将に報告をしなくてはと思うが、眠気が襲う為起きてからでもいいかと部屋に戻る事にする。






貰った薬は枕元に置いて、傷が治ったら鴆君にちゃんと礼を言おうと寝る前にそう思った。



-END-
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