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□春も終わり 11'07'20
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あの満開だった枝垂れ桜が日に日に散っていく。残り僅かな花もあと何日かはこうして酒と一緒に見られると思っていた。
今宵も酒を片手にふらりと外に出て何時もの枝に腰を下ろす。




「…今日も雨か。」



本当ならまだ残っている桜を今日もまた見れると思っていたのだが、降ってきた雨風にやられたのだろう。地面には花びらや何処から来たかわからぬ木々も迷い込んでいた。


折角の楽しみの一つが無くなると喉を通す酒も美味いものではない。ただの水にさえ感じる。




「あっちで呑むか。」


ひょいっと身軽に降りると第二の指定席と言える程よく居る縁側に座る。其処からでも桜の木は見え月明かりが当たるとより鮮明に目に入る程。
ただ何時もと異なるのはあの鮮やかな桃色の花がないということ。


一人酒を注ぎ乍もうすぐで完全に散ってしまう今年最期の桜をぼんやり眺める。微酔い加減になる頃何か気配を感じる。風が少し出て其の人物を丸で此方へと誘うかのように。




人影が月明かりで映し出され見知っている相手を確認すれば瞼閉じる。




「此処で呑んでるとは珍しいじゃねぇの。何かあったか?」

「…別に。ただ最後の桜を見ていただけだ。」

「――注がせてくれや。」




たわいない遣り取りをし乍鴆はリクオの酒瓶を片手に盃に注ぐ。風の音と一緒に注がれる水音が響き渡り、一杯に注がれた其れをリクオは一口で呑み干す。







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