文庫
□こんな時だって 11'02'09
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「…な、なんだ其の姿はぁ?!」
「只の服だろ。アイツがさっきまで着てたからな。」
奴良組本家に用事があった鴆は夕方頃に訪れていた。用事が終わって丁度廊下でリクオに出会す。
ただ其の姿は普段見られる黒の着物に青の羽織り姿ではなかった。
黒い服に対し前が開けられた其処からは白い服が見えている。下はといえば着物とは異なり股下が分かれている。
見慣れぬ夜の姿をしたリクオの格好に鴆は立ち竦んでいた。
この儘立っているのもと思いリクオは鴆の腕を引っ張り部屋へと移動した。
学校帰り、近くで奴良組の妖怪同士で揉め事が起きていると聞いた昼の姿をしたリクオは、鞄を片手に其処へと向かうことに。
仲介に入っていると時間だけが過ぎていく。漸く終わったと一安心した直後姿が一変してしまった。
「…というわけだ。帰り道にまさかこうなるとはな。」
「いや、そうじゃなくてだな…。すぐ着替えりゃよかっただろ。」
「家帰っても少し連れられたからな。まぁ着慣れねぇけどたまにはいいんじゃねぇか?あ―…学ラン、って言ってたか。」
「学ラン…な。ニンゲンってのは珍しいの着やがる。」
「なんなら着てみるかい?その珍しいものを。」
学ランの前釦を開けた儘シャツも鎖骨が見えるぐらい迄露わになっている。そんな事を知ってか知らないのか鴆の方へと近付く。
普段とまた違った感じがするリクオに今の姿を目の当たりにすると利き手で鴆はリクオを抱き寄せる。露わになっている素肌に唇を寄せ少し痛みが走るように吸い付く。
「…俺は着やしねぇよ。お前が着てる方が断然いいね。」
「まぁもう脱ぐけどな。ずっとこの儘ってのも肩が凝る。」
「えっ、ちょっ…待てって。もう少し着ててくれよ、な?」
部屋でそそくさに着替える予定だった筈のリクオは鴆の要望に負けてしまい暫くは其の姿でいることになってしまった。
普段の着物姿に戻る頃にはもう月が綺麗に夜空にあったらしい。
-END-