文庫
□ほんの一時 10'11'19
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ある真夜中の出来事。
用事があったリクオは夜遅く月明かりがよく照る頃合いに帰ってきた。それ程寒くはないが疲れた為直ぐにでも寝ようと自室へと静かに歩いていく。
障子を開け月明かりが室内に差し込み何故か人の姿が見えた。
部屋でも間違えたか、いる筈のない人物に其れを閉めると、中から声が聞こえる。やはり見間違えではなかったらしい。
「こらっ、何処行くんじゃ。入ってこんか。」
「…此処、俺の部屋だろうが。何で居てんだ?」
「可愛い孫を待っていたんに決まってるじゃろ。最近は構ってくれんしのぅ。」
溜息しか出ないリクオは羽織りを脱ぎ軽く畳んで枕元に置くとじじぃであるぬらりひょんのことは気にせず寝ようとする。その行動を見れば後からぬらりひょんは布団に入ってきた。少し大きめの一人用の布団に二人も入れば流石に狭い。
リクオは布団を引っ張れば隣りに居るぬらりひょんを睨むように見遣る。
「俺は寝る。」
「つまらんのぅ。昼も昼で学校とかで相手してくれん。」
「…そう言いながらくっついてんじゃねぇ。離…れろ、じじぃ。」
背中から抱き着いているぬらりひょんにその腕を解こうともがいていたが、背後から寝息が聞こえるとまさかもう寝てしまったのかと思い一言呼んでみることにした。
「……おい、じじぃ?…寝たのかよ、ったく。」
もういいか、と無理に解こうとはせず抱き着かれた儘リクオは瞼を閉じることにした。
別に抱き着かれるのは嫌ではない為この儘起こしてまでしなくてもと半ば優しさから。
寝ている間無意識か、腹部にあるぬらりひょんの手にリクオは自分のを重ねていたらしい。
朝になり廊下を歩いていた昼の姿をしたリクオは其処ですれ違ったぬらりひょんに耳打ちされた。
―手を掴まれて起きづらかった―と。
夜の記憶があるリクオはドキッと肩が揺れ、まさかと真実か戯言かぬらりひょんの言葉を疑うしかできなかった。
-END-