文庫
□月夜の静けさ 10'10'18
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今朝から何やら騒がしいのには気付いていたリクオは、あまり興味はなく側近である二人と共に相変わらずの学校へ通う。
其処で知ったのが今夜が十五夜であるということ。満月を眺めながらの団子という古風である行事。
夕方には既に本家では賑わいの声が聞こえる。いつもは夜中から騒いでは呑む妖怪達も今宵は早くから楽しんでいる。
そんな中、三代目であるリクオは其処には居らず調理場から酒と団子をくすねていた。綺麗な少し小さめな重箱に入っている団子に、普段呑む酒とか違い甘酒が用意されていた。
曇り空だった夕方と打って変わり晴天のように雲一つ無く満月がよく目立つ。慣れた足取りで義兄弟である鴆の処へとやや上を見て一人月を眺めながら向かう。
その頃鴆はというと、仕事が一段落して残りの巻物に目を通していた。秋の涼しさか風が心地好く巻物が飛ばぬよう少し開けてある障子から吹き込む。筆を用いて慣れたようにつらつらと達筆に書く。
「こんなもんか。」
つい独り言が出てしまう程集中していた作業が終えると両手をやや後ろに付き、軽く伸びをしては疲れきった身体を休ませる。
先に片付けてしまおうと重い腰を上げれば綺麗に巻いていき元の筒状へと戻していく。
風の入れ替えでもと鴆はそのまま障子を開けて外へ出る。端に座り柱に凭れながら両手は腹部で腕組みをして、ただぼんやりと物思いに浸るように満月を眺める。
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