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□過ち 10'09'18
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時間も空き丁度良い酒が手に入ったリクオはいつものように片手に酒瓶を、ただ一人で飲むのには勿体無い、どうせなら一緒にと思い薬鴆堂へと向かう。いつものように裏から身軽に上っては灯りのある部屋へと着地する。
鴆の部屋では灯りの中で話し声が聞こえる。こんな遅い時間に珍しく訪れてきた相手に一瞬双眸が丸くなる。本家では見慣れた、よく聞くはずの声の主、総大将が目の前に居る。
最近のリクオが夜中に鴆のところへ行っているのは勿論知っていた。ただなんとなく、興味本位かはたまた可愛い孫で遊びたくなったのか、一足先に薬鴆堂へと来ている。障子の向こうに後からきた孫、リクオが居るのはわかっていた。
その時だ。鴆の目の前でぬらりひょんは昔の姿、若いころの姿へと変える。
「総大将、これはなんの真似ですかい?」
「ただのきまぐれに過ぎん。何じゃ、儂の若かかれし頃でも見てリクオと被さったか?」
「そんなわけがねぇ。血の繋がりがあっても総大将とリクオは違いますぜ。」
「豪くあやつを買うとるのぅ。」
小さな笑みを浮かばすぬらりひょんは目の前にいる鴆との距離を縮める。そのまま声を掛けずに唇を重ねる。触れるだけの感触が舌先で周りを舐め、時折吸い付いたりして敢えて音を響かせる。横目で障子のほうを気にかけ、相手がどう出るか伺う。
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