婆沙羅

□両刀な彼女
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職場でお昼休憩中。
弁当を食べて一息ついていると、高校時代からの友人で飲み仲間でもある元親から電話がかかってきた。


『よぉ、月城。久し振りだな。元気にしてっか?』

「元気よー。どうしたの、急に電話なんかかけてきて」

『お前、明日休みなんだってな』

「そうだけど。何で知ってんのさ」

『秘密』


何か含んだ声にイラっとする。
元親のクセにと酷い事を思いながら冷たく返した。


「何か用?用が無いなら切るけど」

『ま、待て!用はある。明日休みなら久々に飲まねぇか?いい酒が手に入ったんだ』


あの体格で慌てる様子が目に浮かび、つい笑いが漏れた。電話越しに少し怒ったような声を聞きながら考える。
お酒かぁ。最近飲んでなかったし、明日休みだからいいかな。


「いいよ。何時にどこ?」

『あーその事なんだけどよ。お前ん家じゃダメか?』


今度は困ったような声に私が困る。
別に元親を含め友人を家に上げること自体に抵抗は無い。付き合いも長いし、雑魚寝が当たり前の仲だから。

しかしそれとこれはまた別の話であって・・・・・


「家、散らかってるし騒げないよ」

『それくれぇ別に気にしねぇよ。酒とつまみはこっちで準備する。だから、な?』

「む、分かったよ。何時頃に来る?」

『8時過ぎになっかな。よろしく』

「了解」


結局は私が折れて話がまとまった。


その後いつも通り仕事を終えて家に着いたのが8時ちょっと前。着替えたり部屋を片付けたりするとあっという間に8時を過ぎた。

すると呼び鈴が鳴り、出てみると何故かケーキの箱をを持った幸村が。「元親殿がここだと」と言うから首を傾げつつ家へ上げると次はたくさんの料理(まつさんお手製)を抱えた慶次が来た。
その次は大量のビールを持った893・・・ではなく小十郎さんと、小十郎さんの手作り野菜で出来ているであろうおつまみを持った政宗が来た。


皆一様に「元親が」と言う。その張本人が、たくさんの酒瓶と元就と共にやってきたのが8時半だった。


「ねぇ、どういう事?私聞いてないんだけど」


てっきり元親だけ、連れてきても1人か2人だろうと検討していたのにこの人数。
持ってこられた料理やおつまみをお皿に盛り付けながら元親に尋ねる。


「あ、言って無かったか?皆で飲むって。佐助は遅れるとか。ちなみに全員明日は休みだから飲み比べやろうぜ!!」

「え」

「最後まで残った奴が、負けた奴を好きなようにしていいってルールな!Let's Party!!」

「ちょ、待っ・・・」


にかっと笑う元親に便乗する政宗。
その笑顔にイラッときて周りが諌めるのも聞こえなかった。持ち前の負けず嫌いも作用して、気付けば他の皆が潰れていた。










「そ、そうなんだ・・・・・」

「そ。最初に潰れたのは確か幸村。政宗に挑発されてハイペースで飲んで」


やっぱりと思いながら少し同情する。旦那酒に弱いからなぁ。お酒よりも断然甘い物だ。
そんな事を考えていると、月城はふらりと冷蔵庫からケーキを取り出して食べていた。
確かこの子も旦那に負けず劣らずの甘い物好きだった。


「ほんと、月城ってお酒強いよねー。んで甘い物好き。そういうの”両刀”って言うんだよ」

「両刀って男も女も抱ける人の事言うんじゃないの?」

「ぶっ」


なんて事言うのさ!驚いてうっかり噴出してしまった。
というか、女の子がそんな事言うもんじゃない。

ティッシュの箱を投げて寄越しながら不思議そうに首を傾げる。


「え?違うの?」

「違うと思うけど・・・」

「前読んだ本に書いてあったんだけどな。まぁいいや、ごちそうさまでした」


ケーキをきれいに平らげてお皿を片付け始めた月城。少々足取りが覚束ない所を見ると、ちゃんと酔っているようで少し安心する。
この子酔ったって自覚するまで飲んじゃうからね。

その後、何処からか迷彩柄のブランケットを持ってきて俺に投げた。


「布団は余計に無いからその辺で適当に寝て」

「あれ、俺様何も言ってないよね」


いつ切り出そうかと計っていた時に月城からの言葉。
普段なら適当に流すけど、今は酔っている所為か素直に答えてくれる。


「終電とっくに過ぎてるし、酒飲んだから最初から泊まるつもりだったんでしょ。じゃ、おやすみ」

「おやすみ、月城」



早口に言い切り自分の寝室に入っていく月城に返事をして、隅の方に寝転がった。
久し振りに摂取したアルコールがゆっくりと睡魔を連れてくる。おぼろげな意識の中、こういうのもたまには悪くないと思った。

次は飲み比べにも参加しよう。


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