裏文章

□優しい悲劇
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宍戸が目を開けたとき、部屋は薄暗かった。
一体、今が明け方なのか夕方なのか宍戸には判断できなかった。




跡部に、この部屋に閉じ込められて何日目になるのだろうか。もう既に日数を数えることも止めてしまった。

この部屋には外から鍵が掛けられて、自由に出入りすることができない。
明かりといえば高い位置にある窓から入る太陽光だけだ。はじめはこの部屋にも電気やテレビがあったのだが宍戸がいらないといって、その機能を停止させた。


宍戸はゆっくりと起き上がると朦朧とする頭を壁に預け窓の外を眺めた。
けれどもその目は何も映していてはいない。
ただぼんやりと、眠りにつく前の出来事を思い出していた。





いつものように跡部がこの部屋に入ってきて、宍戸の手首を縛りベッドの柵に繋いだ。

抵抗など最早する気はないが、繋がれているという事実が欲しかった。そうすれば、まだ自分にも意志があるような気になれた。
自分はおまえを拒んでいるのだという意思表示にもなる。
しかし跡部は、そんな宍戸の健気な努力など見抜いていて本当は手など縛りたくはないのだけれど、宍戸の意志を尊重していた。

当に意志など無いと分かっていながら、尊重もなにもないし馬鹿げているがそんな演技も二人には必要だった。


手を縛って柵に繋げたあと、跡部は宍戸の体を開き中に入った。
突き上げられて抉られて貫かれる。そのたび、ベッドが苦しそうに軋んで悲鳴を上げた。
それは何度も聞いて、聞き慣れているハズなのに、ベッドのくせに悲鳴を上げるなんて滑稽だと、宍戸は思った。
自分ですら悲鳴など、上げないのに。

そう思ったら何故か愉快な気分になって笑った。



それから跡部の体に足を巻き付けてより深く挿入させて自らも腰を振った。
久しぶりに悲鳴のような嬌声を上げる。ベッドの悲鳴が掻き消えるくらいの声を上げてやった。




跡部は宍戸の体から出ると身仕度を整えて宍戸の体をキレイに拭いた。そして抱き締めてキスをした後、「絶対に逃がさない」といつもの言葉を吐くと、宍戸の手の戒めを解き部屋を出ていった。

宍戸は疲れていたのですぐに眠った。
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