裏文章
□依存症(鳳宍)
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「おれ、宍戸さんがいないとだめなんです」
泣きながら、でも笑顔で長太郎がそう云った。
もう吐くものがなくなって、胃液しか出てこなくなって苦しそうに顔を歪めた。
でも笑っていた。
オレはただ見てることしかできなくて、見てるだけのオレを長太郎はやっぱり笑顔で見上げていた。
【依存症】
長太郎は大学にも行かず、大半をオレの部屋で過ごした。
たまに、仕事から帰ってくると長太郎が夕食を用意して待っていたりした。
それはそれで楽しかったけど、やっぱり大学には行くべきだと思ってそう云うと、
「おれは一日中ずっと宍戸さんの部屋で宍戸さんのことを考えて宍戸さんの帰りを待っていたいんです」
と、あの時と同じ笑顔で云った。
なんだか見知らぬ人のようでちょっと恐かった。
「大学に行きたくねぇんだったらバイトでもしてみたらどうだよ」
そんなふうに、長太郎に怯えてしまったことがなんだか申し訳なくて、できるだけ何でもないように装って提案した。
「そうですね。そうします」
あっさりと云ってオレの腕を引っ張ってキスをした。そのまま押し倒してオレの体をいいように扱った。
長太郎が何度も「あいしています」と云うから、オレも何だかそんな気がして「あいしてる」とかうわごとみたいに繰り返したのを覚えている。
本当はあいしてなんかいなかった。
誰よりもすきだけど、あいしてはいなかった。
多分そう思う。
そんなことが何度かあった。