詩と物語

□小さな悪魔
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 小さな悪魔が居ました。とても小さな悪魔です。
目の前に居る誰かが「最も恐れているもの」に姿を変えて、毎日遊んでいるのです。

 小さな少女が居ました。とても小さな少女です。
約束の指切りをしたまま、どこを見つめているわけでもなく、たった一人でベンチに座ったまま、耳を澄ましています。
あの人の足音が聴こえてこないかと、一人待っているのです

 ある日、悪魔と少女は出会いました。
少女の目の前に立った悪魔の姿は「何も見えない暗闇」でした。それは「少女が最も恐れているもの」でした。
悪魔は少女の手をひいて、ささやきました。
「キミを連れて行くよ」

 少女の耳に届いたのは、指切りをしたときの、あの人の懐かしい約束の音でした。少女はあの人の顔を思い出して、その手をふわり、握り返しました。

 すると、悪魔の姿は、黒い、重い、暗闇から、薄く、軽く、変わっていきます。
その姿は「      」でした。
それは「少女が最も恐れているもの」でした。

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