詩と物語
□たまごのから
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決められた場所に並べられて、居場所なんて、自分の力じゃ変えられなくて、
キミの手からもがいて、逃げ出して、床に落ちたら、自分の殻にヒビがはいった。
何の為の殻だったっけ。
この冷たい殻は、いつ作ったんだっけ。
殻の中は意外と快適で、この狭い空間なら、誰も入って来れないよね。
ボクを傷つける誰かは、もう居ない。ボクを傷つける誰かは、ボクだけになった。
ボクの中身は不安定で、いつも感情が波打って、
何も起きないことを喜んでみたり、何も起きないことが無性に悲しくなったり。
何も感じなくなって、頬をつねってみたりして、痛みを感じなくなるなんて、やっぱりないか、また考え始める。
殻の内側は、薄っぺらい自尊心に覆われていて、自分でつついたら、たちまち破れてしまいそう。
殻を壊して、外へ出て行った人も居た。ボクは羨むと同時に、なぜだか安心してた。ボクだけは、殻の中だから。もう何もないよって。
外に出た途端、きっと、自分の誇っていたものが、小さく見えてしまう。
自分の1番は、人の3番ぐらいなのかな?
気づきたくなくて、小さな中に寄り添って、この中なら1番だねって。
ボクの形はまんまるじゃないから、不規則にフラフラ転がっていく。いつまでも傾いたまま、自分一人じゃもう、立てないんだろうな。
キミは逃げ出したボクを、もうどうでもいいって思ってるはずなんだ。ボクの代わりなんて、もっと居たよ。
なのにキミは、またボクを拾い上げて、
「何になりたいの?」
そんなの、キミが決めると思ってた。
キミじゃなくても、他の誰かに、決めつけられるものだと思ってた。他人とか、生まれた環境が、決めてしまうんだと思ってた。
「ボクは何になりたい?」
自分の殻を割るには、少しだけ、誰かの助けがいるみたいだ。