title of 910


□捕まえたと思ったら
1ページ/1ページ


しっかりと着物の裾を掴んで、決してはぐれまいと口を引き結んでいる乱菊の顔を見て、ボクは笑った。

何処にも行かへんから

そう言ったらますます怒ったような顔をして

嘘つき

彼女は一言呟いて手を離した。

行かへんとちゃう
行かれへんねん

キミのそんな顔を見たら。


思わず額に口付けた。

大きな瞳を目一杯見開いて固まっているキミの小さな手を

ボクはしっかり掴んで歩き始めた。

決して離す事はしないと心の中で呟いて。

幼なかった自分はきっと何でも思い通りになると信じていた。

大切なのはキミの笑顔だけ。

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ