title of 910
□捕まえたと思ったら
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しっかりと着物の裾を掴んで、決してはぐれまいと口を引き結んでいる乱菊の顔を見て、ボクは笑った。
何処にも行かへんから
そう言ったらますます怒ったような顔をして
嘘つき
彼女は一言呟いて手を離した。
行かへんとちゃう
行かれへんねん
キミのそんな顔を見たら。
思わず額に口付けた。
大きな瞳を目一杯見開いて固まっているキミの小さな手を
ボクはしっかり掴んで歩き始めた。
決して離す事はしないと心の中で呟いて。
幼なかった自分はきっと何でも思い通りになると信じていた。
大切なのはキミの笑顔だけ。
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