from me
□たまには甘えてあげる
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「隊長…アタシ残業できませんから」
ギンから今夜会おうと連絡が入ったのはつい1時間ほど前のことだった。
ギンは虚討伐のため現世に滞在していて会うのは2週間ぶり。
いつ帰るかもわからない、長ければ3ヶ月になるかもしれないと言われていた。
連絡が入ったとき乱菊は、素直に嬉しかった。
「ふざけんじゃねぇ!!この書類の山が目に入らねぇのか!!こんなときは普段役に立たねぇお前の手だって必要なんだ!!文字通り猫の手も借りてぇんだよ!!」
「でもギンと約束がぁ!!」
「そんなもんすっぽかせ。俺が誰との約束断って仕事してることか」
雛森か…
乱菊は直感した。
自隊の隊長も愛しい人を犠牲にして仕事をしているとなれば自分だけ帰ることもできず渋々席に座りギンに急な残業が入り無理になったと連絡してデスクワークに取りかかった。
ギンの残念そうな声を聞きたくなくて一方的に用件だけ伝えると電話を切った。
そして普段滅多にやることのないデスクワークを必死にやった。
早く終われば少しでもギンに会えるかもしれないし。
トントン
「誰だこんなときに、松本出ろ」
「はい…」
「こんな時間にどちら様?」
「乱?ボクやで?」
「ギン!!」
「今日はごめんね、隊長がわがまま言うから…」
「ちょっ、十番隊長さん?乱に迷惑かけんといてくれます?」
ギンと乱菊二人に何を言われても忙しさのあまりこめかみがピクリと動くだけで何も言い返さなかった。
「隊長も雛森との約束断ったみたいなのよねぇ、だからアタシだけ帰るわけにはいかないでしょ…?」
「えぇよ、ここにおるから」
「そう?ならアタシも休憩しようかしら」
そう言い二人でならんでソファーに座った。