微妙な19のお題

□13.約束しよう、それはとてもかなしいものかもしれないけど
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「ギン、アンタの欲しいもの何?」

乱菊の部屋のソファに並んで座っているギンに言った。

「ボクの?」


それまで沈黙だった空間で、いきなりまったく脈絡のないことを言い出した乱菊にギンは驚いたような顔をして聞き返した。


「そうよ、アンタの。だってアンタ、今月、誕生日じゃない?」

「ボクの欲しいもの…ってなんやろ」

「なによそれ…自分の欲しいものもわかんないの?」


ホンマはあるんやで?


昔からボクの願いはただひとつや。


乱菊と一緒におる権利。


でもそんないなこと言えるわけないやん。

やってボクはもう、乱と一緒におれる期限が迫っとる。

それは100年も昔から決まってることやもん。


「ないなぁ…乱も今月誕生日やないの。乱こそ欲しいもんないん?なんでも買ったるよ」


やって、乱と一緒に祝える最後の誕生日やし。

「アタシ?新しい着物にぃ、おいしいご飯に…」

「そんなんでえぇの?」

「そんなん?アタシの着物は結構高いのよ?それにご飯だって、アタシに安いものなんか食べさせたら承知しないんだからね?」

「わかっとるよ。ほかにないん?欲しいもん」

「他か…あるわよひとつ」

「何?絶対プレゼントするわ!!」

「言ったわね?絶対よ?」

「絶対や、言うてみ?」

「干し柿」

「干し柿?」

「そう。でも買ってきたのじゃダメよ?毎年、アンタんとこの隊舎でとれるのがあるでしょ?あれ、アンタが干してアンタが毎年アタシんとこに届けに来てよ。それが欲しいもの」


隊舎の横の…


ボクが作った…


ボクが届ける…


どれもこれも無理なことばっかりや…


だってそれ、変わらない日常ってやつやろ?

ボクがここにいぃひんかったらできひんことやろ?



「無理なの…?」

きっとボク、困った顔してたんやろな…
乱が悲しそうな顔して言った。

「そんなことないで?」


ボク、その顔に弱いんよ…
その顔が早く笑顔にかわってほしくて言ってしもた…


「じゃあ約束よ!!」

「約束や」

笑顔の乱菊としっかり小指を交わした。
守れんてわかっとるのに…
約束してしもた…


でも乱の悲しむ顔は見たないんや。

別れのときの一回きりでえぇんや、そんな顔は。

やから、ワガママやけど、嘘つかせてもらうで…?


ごめんな…


約束しよう、それは守れない約束かもしれないけど…それは悲しいものかもしれないけど…
 

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