恋をする
□12.恋したあの日にサヨナラ
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ギンになんか、会いたくない。
自室のドアの前に立つと何かがおかしい。
中から微かに霊圧を感じた。
ギン…
覚えのある懐かしい霊圧。
アタシがドアを開ける前に勝手に中から開けられた。
ドアを開けたアイツを無視して部屋の中に入るとアイツもついてきた。
「乱、仕事もう終わったん?」
「なんでアンタがここにいるのよ」
アタシのことなんか何もわかってないくせに…
飄々と現れたアイツに腹が立った。
「僕非番やし」
「あっそ、なんか用な訳?」
しだいに言葉も冷たくなる。
「なんでそないに怒っとるん?」
「はぁ?アンタ馬鹿なんじゃないの?そんなこともわかんないわけ?」
「わからへん」
「子どもよ、お腹の子ども。産ませたくないならはっきりいいなさいよ!!」
「産ませたない?そんなことボク、言うてへんよ?」
「だってそういうことでしょ!!今まで連絡一つなくて。アタシがどんなに悩んだかアンタは知らないでしょ!!」
「ボク、言うたつもりやってんけどなぁ、産んでほしいて。乱には伝わってるおもとったわ」
伝わってる?
馬鹿なこと言わないでよ!!
「そんなこと言ってないじゃない!!」
「言うたよ、心んなかで」
「そんなの、伝わるわけないでしょ、ちゃんと口に出していってよ」
「乱、結婚しよ?ほんでボクの赤ちゃんを産んでください」
「結婚?」
「いや?」
「いやじゃない」
「これ、受け取ってくれへん?」
そう言ってギンは懐から小さな箱を取り出した。
「指輪や。この三日間、乱に似合う指輪、一生懸命探したんやボクの気持ち、乱ならわかっとるおもて…不安にさせてごめんな?」
ギンは小さくうつむいた。
「じゃあ愛してるって言って」
「何言うてんの?」
アタシを悩ませた仕返し。
「言ってくれなきゃわかんないわ!!」
「乱菊、愛しとるで」
「アタシも」
バイバイ、思い出せないほど昔のあの日…
ギンに恋したあの日…
そして恋するアタシ。
ようこそ愛することを知ったアタシ。
アタシは恋に別れを告げた。