恋をする
□17.まだ残る君の温もり
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「ん…」
窓から差し込む朝日に邪魔されてギンはむっくりと目を冷ました。
ぽっかり空いた自分の座っている布団の左半分をボーッと眺めた。
また行ってしもたんか…
ギンはさっきまで確かに隣にいたはずの金髪美女を思い少しだけ寂しくなる。
だっていくら甘い一夜を過ごしたとしても、いくら楽しく笑いあって眠りについたとしても、目覚めたとき彼女はもういないのだら。
彼女は人目につかないまだ日も上りきっていないうちに隣で眠るギンにさえ気づかれないように自室に帰っていく。
そのたびギンは彼女の温もりを探す。
まだどこかに彼女がさっきまでここにいたという証が残っているのではないかと。
それを見つけて寂しさをまぎらわす。
またすぐに会えるというのに。
「ええ香りや」
布団に顔を押し付けるとまだ微かに彼女の香りがした。
彼女の温もりを見つけた。
その香りがするだけで彼女がここにいるような感覚になる。
そのままギンは優しくて日溜まりの中にいるようにさえ感じる甘い香りに包まれながら意識を手放す。
そんな甘い夢を見た。
でもここは彼女がいる死神たちがすむ世界ではない。
虚共が蔓延るくらい世界。
夢から覚めたギンはまた彼女の温もりを探す。
まだどこかに残っているはずの甘い香りを…