ラバーズハイ
□ビタークイーン
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この大学に入学したときから、奴は異彩を放っていた。
窓ぎわの席にちょこんと腰掛けて、外の桜をぼんやり眺めていたあの姿に、一体何人が目を奪われたんだろうか。実は私も、そのひとりだった。
まあるい茶色いボブのショートヘア。
日によっては巻いて毛先を遊ばせたり、サラサラのストレートになってみたり。いつだったかは、メッシュを入れていた。
奴はビー玉みたいに透きとおった綺麗な瞳をしていて、たまにこの世のものとは思えないような天使の微笑みを投下する。
女性誌のモード系モデルのようなスッとした顔立ち。細い体。纏っているのは、妖艶なオーラ。
三代 慧
性別 男
女性よりも女性らしいそんな彼を、同級生はみんな、遠巻きに眺めているだけだった。
簡単に言えば、彼はこのクラスでずば抜けて浮いていた。というよりも、この人間界から浮いていた。
かくいう私も、クラスでは面白いくらいに浮いていた。
進学したこの学部学科には、女子はたったの15人。同じクラスになったのはそのうち自分を入れて5人。
仲良くなろうと試みたけれど、初日からみんなは私の知らないアニメの話で盛大に盛り上がっていて。
その中の1人が、そのカップリングに萌えが止まりませーん!と叫んだ瞬間に、女子のグループに留まることを断念した。
クラスを見回してみたけれど、なんだか私とは合わなさそうな、むしろキャントストップ萌えの彼女らとのほうが気が合いそうな…みんなそんな男子ばかり。
もしかして…ていうか、もしかしなくても私、選ぶ学部学科間違えたよね。うん。