BGL
□螢火
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思い出すように、いつもの場所に向かう。七時になると変わらず時計台の鐘が鳴る。それが私たちが集まる合図で、白い息を出しながら走っていた。
駅前の空き店舗は今ではもう新しい店が出来ていた。雑貨屋で学校帰りの女子高生たちが集まっていた。
時計台の壁に寄りかかりながら待つように目を閉じていた。鐘の数が何回鳴ろうと望みの人は来なくて、体温だけが奪われていく。
地面に落ちては消える初雪の日に出会った。お互い来ない人を待っていた。
そして仲良くなってから何回目かの待ち合わせ、きみは寒く凍えた手を握りしめた。フワフワの肌触りの良い生地の手袋。
「寒かった?」
そして私の頬を温めるように両手を当てた。きみも、頬が赤くなるほど冷たいにも関わらず私の心配ばかりしていた。
けれど、そんな……きみはもう、いない。
私がいくらこの場所で待とうと、きみはここには来ない。理解をしていても、心までは冷静になれなくて、いつものように待ってしまう。
ここにいるから、早く、早く来て。