BGL
□忘れ愛
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「また、あのバカ王子がいなくなったのか」
「すみませんでした」
頭を下げるメイドたちは直ぐ様、行方を眩ました男を捜索に向かった。残された男は頭を抱えた。彼はアオイ。バカ王子と呼ばれる脱走癖のある問題だらけの少年を捜していた。
ひとつ溜め息を溢すと窓の外を見る。窓枠がまるで絵画の額縁みたいで、木の葉がユラユラと落ちそうで落ちずに必死に枝にしがみついている。
「このくらい、王子もしがみついてほしいが」
強情に頑張る、という言葉がなくて飽き性で耐え性のないところに王様は嘆いていた。この国の未来を担う方がこんな状態じゃ民もおちおち眠っていることも出来ないだろう。
アオイはキッと表情を変えると目的地が定まっているのか歩き出した。
そこはすぐに着いた。全国の蔵書が揃えられた図書室。その一室にはいなかった。けれど止まることはなく真っ直ぐと歩いた。たくさんの本棚を過ぎて、小さな扉のある壁があり、床に膝を付けてその小さな扉のドアノブを捻った。
ここは、全く知られることのない場所でアオイしか分からない所だった。
「ソラ様」
「……なんで、ここが分かった」
低いトーンで寝起きだったのか不機嫌な声を出して、顔に乗せていた本を太ももに置いた。
小部屋になっていて、立ち膝でやっとの空間。本棚が中にあるが、殆どが空っぽで中に持ち込んだ本だけが何冊が入っていた。
「あなたのお世話係ですから。何年一緒にいると思ってるんです」
「……ちっ。めんどくさい」
ソラは舌打ちをすると本を読み直した。意地でも戻るつもりはないようだった。
アオイはフゥと息を吐くと、膝を床に擦り付けて中に入った。
「そこ、カギ付けとけよ」
「付けたら入られませんよ」
「アオイならカギを開けるだろうが。部屋のカギだって開けるんだからな」
「それはソラ様が部屋で一人コソコソとしてるからでしょう」
「僕だって一人ですることあるだろ」
「ほう? 例えば」
「っ……、そっ、れは、内緒だ。アオイだって、一人になったときすることがあるだろ」
ソラは顔を赤くしたまま反らした。何をしてるのか深い意味はないんだろうが、そんな変わらない彼にアオイは笑みを深めた。