BGL

□小指に赤い糸
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 ガキの頃の約束。もうほとんどが忘れてしまってしまった。ただひとつの約束を残して。


「あー、恋愛してぇ」


 当たり前のようにクラスで上がる声。当然のことで思春期真っ盛りな男だからな。
けど、それだけじゃないのは恐らく男子校だからだろう。


「もう、この際男でも良いや」


 本気で思っていないくせに呟くクラスメート。そんなこと先輩の前で言えば間違いなく襲われるだろう。ノンケと呼ばれようと構わないようなゴリラな男だ。
もちろん見た目の話だけど、そう思わせる所作があったりする。


「羨ましいよな」

「あ?」


 会話に参加をしていなかった俺に声をかける前の席のやつ。話の前後が分かってないのに、振るなよ。
機嫌が悪そうに答えれば、それは怯えた顔をしながら机に雑誌を並べる。


「なんだよ、これ」

「アイドルだってよ」


 キラキラとした笑顔を浮かべる、謂わば美少年と呼ばれる男が雑誌に載っている。何のことか分からない俺は疑問を投げ掛けるとジャンルを話した。
こんなもんが良いのかね女ってのは。絶対に口には出せない言葉だと苦笑いを圧し殺した。


「アイドルだぁ?」

「そう、アイドル」

「これ、週刊誌だよな。別に、グラビアでもないんだけど」

「これで何回目だっけ?」


 今のは俺に対しての問いではなかった。他のクラスメートに話しかけると、集まってきた。暑苦しいから止めろ。


「もう数十回じゃね? ってか羨ましいよな。女を持ち帰り出来るとか」

「……は?」

「こいつ、ソラって言うんだけどさ可愛い顔して、女をコロコロ変えてるらしいぜ」

「……へぇ」


 思わず自分の声が冷めた低いものになっていた。それに気付かない周りの奴等は、噂か真実か分からない話に花を咲かせていた。
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