ウィッチーズの本棚2

□ストライクウィッチーズ〜翼を失ったウィッチ〜 第二話
2ページ/2ページ

「―これが、カールスラントの新しい機体…」

「Bf262だ」

 ハンガーに届いたBf262を見て感嘆するミーナに、淡々とクレヴィングが説明していく。

「今までの機体は近接格闘戦に特化したものが多かったが、このBf262は従来の機体より機動性能が低いが、その分、スピードを重点に造られている」

 クレヴィングの説明を聞いたバルクホルンは、険しい表情を浮かべる。

「スピードを?だが、機動性能が低くなるのは…」

「劣っているとはいっても大した差は無い」

「どれくらい出るのかしら?」

 ブルーのカラーリングがされたBf262から視線をクレヴィングに向けたミーナは問う。

「通常では800。最高速度は、950以上だ」

「950!?それが本当なら、すごいぞ!」

 バルクホルンの目が好奇心に輝く。

「とりあえず、本国から予備機と合わせて3機受け取っているから、使用できるクレヴィング大尉と組んで行きたいと考えているわ」

 ミーナは告げ、クレヴィングに視線を向ける。クレヴィングは頷いた。

「それがいいだろう」

「では、解散」

 解散した後、ハンガーにつながる滑走路へ足を向けたクレヴィングは、そこに広がる光景に、わずかに眉をしかめた。

「お、クレヴィング。もう終わったのか?」

「ヤッホー、アル!さっきはチョコありがとー!」

 滑走路の隅に置かれたデッキチェアに、なぜか水着姿のシャーリーとルッキーニか寝そべっていた。こちらに気づいたシャーリーが軽く手を上げる。

「そこで、何をしているんだ?」

「息抜きさ。クレヴィングもどうだ?」

「いや、私はいい」

「まったく、相変わらず緊張感の無い方たちですこと」

 日傘を優雅にさしたペリーヌが、呆れた表情でやってくる。

「今は戦闘待機中ですのよ。それですのに…」

「データ解析じゃ、あと20時間はネウロイは現れないはず。中佐の許可ももらってるし、それに暑いしー、別に見られて減るもんじゃないしー」

 ペリーヌに嫌味を言われても、どこ吹く風で流すシャーリー。

「ペリーヌは減ったら困るから、脱いじゃだめだよー」

 ルッキーニのからかいに、ペリーヌは眉を吊り上げる。

「お、大きなお世話です!…というか、貴女にだけは言われたくありませんわ!…クレヴィング大尉!」

 そこで怒りの矛先をクレヴィングに向ける。

「貴女も、なぜこの二人に注意なさらないのです!上官として当たり前のことでしょう!」

「おいおい、クレヴィングは関係ないだろ」

 シャーリーは呆れるが、ペリーヌの耳には入らない。

「…中佐の許可をもらっているなら、私が言うことは無い」

「そういう問題ではありません!いくら許可をもらっているとは言っても、こんな態度は軍人としてふさわしくありませんわ!」

 そこまで言うと、ペリーヌはシャーリーとルッキーニを指差す。

「坂本少佐がお戻りになられたら、このことは報告させていただきますわよ!」

「告げ口なんて卑怯だぞー、ぺったんこのくせにー」

「な…!」

 再び口を開こうとしたペリーヌ。

 ビーッ、ビーッ、ビーッ。

 しかし、それは基地中に響く警報によって消された。

「…っ!」

「ネウロイ!?」

「そんな、早すぎる!」

「あ、クレヴィング!」

 ネウロイの襲撃を告げる警報に茫然とする三人を置いて、一人駆けだしたクレヴィングがハンガーまでたどり着くと同時に、ミーナの通信が入る。

「今、こちらへ向かっていた扶桑皇国遣欧艦隊が、ネウロイの襲撃を受けています。乗艦していた坂本少佐が迎撃に出ているけれど、このままでは時間の問題よ。そこで、イェーガー大尉、クロステルマン中尉、ルッキーニ少尉。あなた達は今すぐ出撃して向かってちょうだい」

「待て、ミーナ。今から出撃しても間に合わない。私が出る」

 そうクレヴィングが告げると、焦ったようなミーナの声が返る。

「待って、それはまだ試験飛行も済んでいないのよ。危険です!」

「このBf262なら、まだ間に合う。…許可を」

 何秒かの沈黙の後、ミーナが折れる。

「…分かりました。では、クレヴィング大尉を先行出撃を許可します!」

「了解」

 クレヴィングは発進ユニットへ駆けのぼり、Bf262へジャンプする。両足がユニットへ収納され、ジャーマンピンシャーの耳がクレヴィングの頭に、尻尾がお尻に現れる。

「Bf262、起動!」

 足元にカールスラント式魔法陣が展開され、ユニットのプロペラが回転を始める。

「クレヴィング、発進する!」

 言葉とともに、滑走路を滑り出す。空へ上がった瞬間、爆発的に加速を始めるBf262。その加速は止まることない。もうすでに姿の見えなくなったクレヴィングとBf262に、驚きを隠せないミーナ達だった。


(あとがきと補足)

 作中に出てくるオリ主が使用するBf262は、二期で登場するジェットストライカーの試作機みたいなものです。あまりのじゃじゃ馬で、今のところこれを使用できるのは、クレヴィングを含めてわずか数名です。


(第三話へ続く)
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ