番外編と短編の本棚

□生と死のアラーム
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名前のはずされた病室のプレートを見て
彼女がもういないことを知った
二度と会えないことを知った
誰もいない病室で
皺ひとつないベッドのシーツをつかみ
こらえきれない涙を流す
最後に握りしめた細い手首の感触が
僕の胸を締め付ける
なぜ止めなかったんだ
あのまま抱きしめてあげればよかったのに
あいたい 会いたい 逢いたい
彼女に渡すつもいだった
ペアセットの腕時計
針が12を指し、虚しく鳴るアラームと
小さな嗚咽が響いていた
君が生まれた記念日に
僕の世界は闇に染まる

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